7月に美術館「えき」KYOTOで7月に開かれていた『新版画展』を見てきました。
個々の作家の名前や作品は見たことがありますが、『新版画』というジャンルでくくられた展示会は初めててみるもので、歴史を少し理解することができました。
江戸時代には庶民文化の花形だったともいえる浮世絵版画は明治になっても残っていましたが、明治27年(1894年)の日清戦争を描いた戦争絵のブームが終わると、その後は石版画、写真、新聞、雑誌、絵葉書などという新しい媒体に押されて衰退していったそうです。
また美術の世界にも西洋的な価値観が広まり、分業で製作される木版画は美術よりは一段下に見られていたような事情もあったのかも…。
しかし、大正時代になると、東京の浮世絵商・渡辺庄三郎が版元となって、、絵師・彫師・摺師による分業制作の伝統を継承しつつ、画家の創造性を生かした新たな芸術性を追求する「新版画運動」が起こったそうです。
吉田博《日本アルプス十二題の内 穂高山》大正15(1926)年 この展示会では木版画約100点が展示され、多くが風景を描いたものでした。そして風景画の名手とされ、新版画運動の中心を担った川瀬巴水と吉田博の作品が数多く展示されていました。
吉田博はもともとは水彩画家。繊細な色づかいで、代表作である「陽明門」は96回も摺りを重ねたといいます。そうして表現された版画は、水彩画のような繊細な色彩。 この「関西 猿沢池」は、故ダイアナ元妃が自らの執務室用に購入して飾っていた作品として有名です。
川瀬巴水《元箱根見南山荘風景(5) つつじ庭に遊ぶ二美人》昭和10(1935)年 川瀬巴水は鏑木清方の弟子。全国を旅して写生を重ねて約600点の風景版画を残されたそうです。
その落ち着いた色調は、どこか郷愁を誘います。「昭和の広重」と称されたというのもわかる気がします。スティーブ・ジョブスがコレクションしていたことでも有名でした。
明治31年生まれで平成3年に亡くなられた笠松紫浪の『春の夜の銀座』。こんな素敵な銀座を歩いてみたいものです。
タイトル通り、美しき日本の風景を堪能できた展示会でした^^。