Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる [日記]
9月に都立美術館で観覧したのは「Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる」でした。
このパネルに使われているのは絵ではなく写真。
増山たづ子さんという、生前「カメラばあちゃん」の愛称で親しまれた女性が撮った写真。ダム建設が決まりダム湖に沈むこととなった故郷の岐阜県旧徳山村と村民を記録するため、還暦を過ぎてから写真の撮影に挑戦されたそうで、その写真は10万カットにも上ったとか。2006年に彼女が亡くなれた後、村はダム建設によって消滅したそうです。
本展は、「表現への飽くなき情熱によって、自らを取巻く障壁を、展望を可能にする橋へと変え得た5人のつくり手たち」の作品を紹介する展覧会。特別興味があったわけではなく、正直なところ空き時間を埋めるために立ち寄った感じでした。
反ナチス運動に加わったチェコの方や彫刻家・保田春彦氏(1930-)の夫人のシルヴィア・ミニオ=パルウエルロ・保田さんの作品などもありましたが、一番心を惹かれたのは、増山 たづ子さんの写真。
消えゆくことが決まった故郷の風景を懸命に撮影されたことが伝わってくると同時に、自分の家のアルバムにもあるような、日常のさまざまな場面の風景が懐かしくもありました。
そして、もう一人、東勝吉さん(1908-2007)の作品にも魅入ってしまいました。
東勝吉さんは、木こりを引退した後、老人ホームで暮らしてられたそうですが、なんと、83歳のときから本格的に絵筆を握り、大分県由布院の風景画の制作に没頭されたのだとか。99歳で亡くなるまでの16年間で水彩画100余を描かれたそうです。
83歳で絵を描き始められたことに感動。還暦間近で将来に対して何とも言えない不安を抱く自分ですが、前を向いて進めば歳なんて関係ないよ、っていうメッセージをもらった気分になりました。「自らを取巻く障壁を、展望を可能にする橋へ」がんばります。
横山さんはTVで何度が取り上げられていましたね。そのたびに感動していました。村に対する愛の深さを感じます。物を始めるのに歳は関係ありませんね。
by JUNKO (2021-10-16 20:25)